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よっちゃんの ここだけのはなし Vol.54

ページID:0054302 更新日:2022年8月12日更新 印刷ページ表示

Vol.54 「ユニバーサルサービスに「黄信号」」

信号機

 働けど働けど我が暮らし楽にならず―いわずと知れた、石川啄木の歌の一節だ。多くの首長にとっては、さしずめ、切り詰めど切り詰めど自治体経営楽にならず、といったところだろう。税収の落ち込みに加え、補助金や交付税の削減はてき面に響き、中小の自治体は青息吐息の状態である。長いトンネルを抜けるとそこは雪国であった―とは川端の小説の触りだが、多くの自治体にとり、長いトンネルを抜け出す兆しは見えてない。
 自治体が国から過分な財政的支援を受けてきたことは否めない。景気回復のため、必要でない事業を展開した例があったことも、事実である。無駄なハコモノが乱立されたことも、率直に認めなければならない。だから地方の行財政改革は必要であったし、これからも取り組んでいかなければならない。相生市も昭和から平成にかけて土地区画整理事業や公共下水道事業など数多くの大型公共事業を行ってきた影響で、地方債は増加を続け、平成20年度をピークに歳入不足になる見込みである。
 当市は、「相生市財政SOS宣言」を発表し、平成18年3月には「相生市行財政健全化計画」を策定した。簡潔に言えば平成22年度までに現在の予算額を2割削減するというものだが、人員削減や特別職給料の引下げ、全事務事業の見直しや廃止・民営化、各種補助金の削減など厳しい選択を行っている。財政危機に陥る前に市を健全化しなくてはならない。仮に近隣自治体と合併していたとしても健全化は不可欠である。
 しかしながら、ナショナル・ミニマムとユニバーサル・サービスは、国からの地方交付税の配分など財政支援が施されてきたからこそ、維持・向上してきた。都市に住もうが、地方に住もうが、住民が享受する基本的な行政サービスに大差はなかったのである。小泉内閣が推し進める三位一体の改革は、正しい改革のように報じられる場合が多いが、自治体が国の事務事業を実質的に代行しているにもかかわらず、交付税が大幅に削減されれば、その実行に支障が来たされるのは自明の理である。「仕事はしろ、カネは削る」では、全国津々浦々、共通の行政サービスが施されることはない。
 このままでの改革では、ナショナル・ミニマムは瓦解し、ユニバーサル・サービスは名前だけのものとなってしまう恐れがある。根本的問題の解決なしでは、小規模自治体だけではなく、国民そのものが不幸になる。総務省の研究会は、交付税制度の抜本的な見直しを議論しているが、この観点を抜きにしては、机上の空論になる恐れがある。
 相生市では、生き残りを賭けた戦いが、いま始まったばかりである。
 ここだけのはなし

2006年5月10日 相生市長 谷口 芳紀


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